あらすじ
43歳。仕事はサルサの講師やイベント運営。
教員の妻に比べれば時間の融通が利く僕は、3歳の息子・蓮の送り迎えや食事を担当することも多い。
蓮には、卵・小麦・牛乳の食物アレルギーがある。
だから僕は、いつも考えていた。
「この子に、何を食わせていいのか」
ある朝、保育園へ向かう途中で起きた事故。
次に目を覚ますと、僕と蓮は見知らぬ草原にいた。
空には二つの月。そして手元には、事故の直前まで蓮が食べていた焼きおにぎりが一つ。
剣もない。
魔法も使えない。
特別な能力も、たぶんない。
でも、そんなことより重大な問題があった。
この世界、蓮が安心して食べられるものがない。
米を見つけても安心できない。
肉があっても安心できない。
魚だって、そのまま食べられるとは限らない。
しかもこの世界では、麦・卵・乳は単なる食材ではないらしい。
これは、勇者でも賢者でもない普通の父親が、3歳の息子に今日のご飯を食べさせるために、異世界の「当たり前」と戦っていく物語。
そしていつか――
テレビを見ながら「おいしそう」と言ったあの子に、
本当に「おいしい」と言えるものを食べさせるための物語。