あらすじ
「明日やればいい」という言葉が嫌いだった。それでも僕は、好きな人への告白を何度も明日に先延ばしにしていた。
高校三年の夏、文化祭の準備中、僕と彼女は余った紙コップと糸で糸電話を作る。たった数メートルの距離でも、糸を通せば彼女の声が届く。その不思議な感覚が、僕には二人の関係そのものに思えた。
しかし、彼女が卒業後に県外へ行くことを知り、僕は自分たちの距離が少しずつ離れていくことを感じ始める。それでも勇気が出ず、想いを伝えられないまま時間だけが過ぎていく。
そして迎えた卒業式。二人は最後に糸電話を手にする。僕は「好き」と伝えようとするが、結局口から出たのは「元気でね」という言葉だった。
数年後、僕は部屋の奥から、あの日の糸電話を見つける。途中で切れた一本の糸を見つめながら、僕はあの恋が始まることも終わることもなく、未完成のまま残っていることに気づく。