あらすじ
九年前の卒業式の日、土屋奈緒は、親友の滝澤由佳から想いを告げられた。
嬉しかったはずなのに、周囲の目が怖くて、奈緒は答えることができなかった。代わりに尋ねたのは、「次、いつ帰ってくるの」という言葉だった。
それから九年。上田で暮らす奈緒のもとへ、東京で働く由佳から一通の連絡が届く。
――昔言ってた旅行、今なら行ける?
上田駅で再会した二人は、別所温泉、松本、木崎湖、青木湖、白馬をめぐる五日間の旅へ出る。
車内に流れる沈黙。旅館に並べられた二組の布団。湖畔で触れた膝。互いに知らないまま過ぎた九年間は、何気ない会話の隙間から、少しずつ姿を現していく。
あの日の告白に返事をしないまま、由佳の気持ちだけを確かめようとする奈緒。そんな彼女へ、由佳は静かに問いかける。
「まだ私が待ってると思ってた?」
これは、言えなかった言葉を抱えた二人が、長野の夏を遠回りしながら、もう一度「次に会う日」を選び直す物語。