あらすじ
人間の感情を、記憶から切り離して売買できる時代。
会社を潰した経営者の後悔。
子供との関係を壊した親の後悔。
誰かの失敗は、別の誰かが同じ過ちを避けるための商品になった。
感情資産取引士――通称「後悔屋」の榊は、十二年間、人々の後悔に値段をつけてきた。
ある雨の日、十八歳の少女・久住絵麻が店を訪れる。
「後悔、売れますか」
彼女を査定した端末に表示されたのは、これまで一度も見たことのない警告だった。
《特級後悔》
規則では、即座に警察へ通報しなければならない。
だが榊が緊急ボタンへ手を伸ばしたとき、少女は言った。
「押さない方がいいですよ」
「その後悔の中にいる人――あなたですから」
他人の後悔を売り続けてきた男と、彼の後悔を買った少女。
一つの後悔をめぐる、近未来SF短編。