あらすじ
「人が遺すものは、すべて計算の残渣に過ぎない」
東京の片隅で、他人の遺品から生前の行動パターンを逆算する風変わりな遺品整理士・漣蒼介(さざなみ そうすけ)。かつて流体力学を極めた数理学者だった彼は、四年前の悲劇的な事件を境に心を閉ざしていた。
そんな彼の元に、警視庁捜査一課の新人刑事・織田霧子が持ち込んだのは、現代科学をあざ笑うかのような【物理的に不可能な怪事件】だった。
世界的な時計職人が、自宅地下の完全密室で死亡した。
死因は「溺死」。しかし、現場の床も、壁も、被害者の衣服さえも、カラカラに乾燥しており、水滴一滴すら残されていなかったのだ。
容疑者三人には、現場から20キロ離れたホテルにいた完璧なアリバイがある。
誰もが頭を抱える中、蒼介は遺品に遺された「熱の壁」と「狂った時計」のノイズを見抜く。犯人が仕掛けたのは、巨大なガラスの水時計そのものを利用した、あまりにも冷徹な熱力学のトリックだった――。
孤独な天才数学者と、真っ直ぐな女刑事が織りなす、一気読み必至の本格理系ミステリー長編。
数式の果てに待つ、切なくも美しい真実の解とは?