あらすじ
十歳になった途端、仕事がなくなった。
それから私は、愛され続ける方法がわからない。
かつて有名子役だった瀬川彩海、二十七歳。今は会社員として静かに暮らす彼女は、駅前で劇のチラシを配る女性と出会う。
「あやみちゃん! あやみちゃんだよね!!」
声をかけてきたのは、二十六歳の劇団員・戸津美和子。
周囲に夢を諦めるよう迫られながら舞台に立つ彼女は、幼いころ、テレビの中の彩海に救われていた。
甘すぎる卵焼き。小さな傘。洗面台に並ぶ二本の歯ブラシ。
少しずつ暮らしを分け合い、恋人になった二人。けれど、近づくほどに、互いの存在が痛くなる。
今の自分を愛してほしい彩海。
彩海が持っていた才能を、どうしても羨んでしまう美和子。
「役者にだって賞味期限があるんだよ……」
好きなのに、試してしまう。
大切なのに、傷つく言葉を選んでしまう。
かつて選ばれた女と、選ばれたい女。
愛されることに不器用な二人が、それでも互いに手を伸ばす、ひりつく大人の百合小説。
全15話。