あらすじ
「この危険なあばら橋一つまともに直せぬ無能な女など、王家に不要だ」
王国最西端の断崖『竜牙峡』——霧に沈む数百メートルの奈落に架かる吊り橋。その中央で、王太子ラルフはオリヴィアに婚約破棄を突きつけた。自称聖女の男爵令嬢ミレイユを侍らせ、高笑いしながら。
だが彼らは知らない。前世で橋梁保全技師だったオリヴィアが、この王国唯一の交易路にして命綱たる橋を、構造計算と荷重試験の積み重ねで十年間、一人も落とさず守り続けてきたことを。
『崩れかけて見える』のは、緻密な保全の結果。そしてメインケーブルの寿命が、あと三日に迫っていることを知るのは——この世界でオリヴィアただ一人。
「ではこの橋の管理、すべてお返しいたします。今この瞬間から」
辺境側に立つ彼女と、王都側に立つ二人。この位置関係が、すべてだった。
怒鳴らず、喚かず、ただ正当な行政手続きに則って。廃橋管理令嬢が、王国の命綱を静かに握り返す——。
品質管理という概念のない国を捨てた彼女が、忠義の家令と不器用な竜人の将軍とともに、一から積み上げる新しい物語。ざまぁと再起の痛快構造譚、開幕。