あらすじ
「俺は誓いません。……でも、離れません」
——誓いが絶対の国で、ただ一人、誓わずに仕える従士がいた。
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北の辺境伯家の一人息子エルドと、三つ年上の従士レイフ。年若い二人は、川辺で火を囲み、剣を打ち合っていた。いつかレイフが叙任を受け、正式に主従の誓いを結ぶ。そんな当たり前の明日を、二人とも疑わなかった。
その明日は、一夜で燃えた。
二つの家の和睦の宴。破れないはずの誓いに守られた広間で、誰ひとり誓いを破らぬまま、何もかもが裏切られた。父も母も家も失い、逆賊の子となった十三歳のエルドを背負って、レイフは燃える城から雪の中へ逃げる。
口の悪い女マグダに拾われ、剣と生き方を叩きこまれて七年。青年となったエルドは、あの夜の真実を追いはじめる。
だが、奪われたものを取り戻すはずの旅が、エルドの中から、かけがえのないものを少しずつ奪っていく。何を失ったのかは、本人には分からない。分かるのは、隣を歩く者だけだ。
破れない誓いの国で、破れる約束だけを頼りに進む、三人の物語。