あらすじ
「封鎖の記念祭の日。その日没に、あなたの命に関わることが起きます」
望まない縁組を断るため、文書館の職を求めて王都へ来た男爵令嬢リーゼ。
そこで出会った騎士アーベルは、初対面のはずなのに、彼女がつまずく場所も、困ったときに必要な言葉も知っていた。
親切なのに、何かがおかしい。
なぜこの人は、私を見るたび、何かを失ったような顔をするのだろう。
警告の根拠を明かさない彼を、リーゼは信じない。けれど、繰り返し見る夢の街路が、九十年前に封鎖された区画と一致したとき、自分の身に起きていることを調べ始める。
避難は成功したはずだった。
それなのに、誰もいないはずの壁の内側から、水を求める記録が残っていた。
消された名前をたどるほど、彼の隠し事にも近づいていく。
彼だけが覚えている、何度も彼女を失った三か月へ。
「あなたが知っている私と、今ここにいる私は、同じですか?」
何度でも救いたい騎士と、自分の未来を自分で選びたい令嬢。
これは、彼にもわからない明日へたどり着くための、恋と記録の物語。