あらすじ
雨の日、松岡慎吾は見知らぬ古本屋に迷い込んだ。
看板には「いろんな本あり〼」。
店の名前は読めない。
白髪の店主は無愛想で、レジの代わりにそろばんを使っている。
そこで慎吾が手にしたのは、クリームソーダが描かれた一冊の本だった。
家に帰って表紙を見ると、そこにはいつの間にか『かもなんばんをたべたひ』というタイトルがある。
書かれていたのは、天ぷらうどんを食べるつもりだった子どもが、初めて鴨南蛮を食べた日の話。
それだけだった。
その後も、雨が降るたび慎吾はその本屋へ足を運ぶ。
24色の色鉛筆。
コーンスープ。
たい焼き。
ネギを入れすぎた冷奴。
手にする本に描かれているのは、誰かの人生を変えるような大事件ではない。
どうでもいいと言ってしまえば、それまでの小さな出来事ばかり。
それなのに、なぜか忘れない。
人生は変わらない。
それでも、なぜか忘れない本がある。
これは、雨の日に出会った不思議な古本屋「蒔城堂」と、そこに並ぶ少し変わった本の物語。