あらすじ
一年前。
国内最難関と呼ばれる〈新宿第零ダンジョン〉の攻略中、一人の探索者が行方不明になった。
桐生レン、十九歳。
低ランク探索者。
戦闘能力は低く、パーティーでは荷物持ちと補助を担当していた。
最深到達記録を更新した攻略配信の最中、魔物の襲撃によって仲間から切り離され、一人だけダンジョン深層へ取り残された。
救助隊は三度編成された。
すべて失敗。
桐生レンは死亡したものとして扱われた。
それから約一年。
新宿第零ダンジョンの入口を映していた公式配信に、一人の男が映り込む。
長く伸びた髪。
ぼろぼろの服。
見たこともない黒い剣。
一年前に死んだはずの桐生レンだった。
そして彼は、国内最高位の探索者でも単独討伐が難しい魔物を、一撃で斬り伏せる。
配信は瞬く間に拡散。
一年前に仲間から見捨てられた少年。
最難関ダンジョンからの奇跡の生還。
未知の力。
圧倒的な強さ。
世間は熱狂する。
誰もが思った。
――物語の主人公が帰ってきた、と。
ただ一人。
配信を見ながら頭を抱える男を除いて。
男の名は田中。
職業、暗殺者。
彼には分かっていた。
主人公、桐生レンはもうすぐ――
〈完成〉することが。