あらすじ
ロゼリア・ヴァレンティ伯爵令嬢には、前世の記憶がある。苦情処理課で三年、理不尽な言いがかりを崩し続けた記憶が。
おかげで、つじつまの合わない話を聞くと頭が勝手に動く。日付を照合し、証言の出どころを追い、穴を数えてしまう。止まらない。
そして今、大広間では王太子が婚約者を断罪している。日付も、利き手も、伝聞の出どころも、何もかもが噛み合わないまま。
――恐れながら、殿下。その告発、根拠が三箇所おかしゅうございます。
言ってしまってから、ロゼリアは青ざめた。
断罪されていた令嬢イーディスは、恋しい人の妹。しかも両家の縁談は「イーディスが王家へ嫁ぐこと」を条件に成り立っている。彼女が廃されれば、ロゼリアの恋も消える。
つまり、守るしかない。守り続けるしかない。
けれど王太子は、論破されるたびに目を輝かせるのだった。
「見事だ! これほど聡明な令嬢に会ったことがない!」
――やめて。こちらを見ないで。
守れば守るほど、自分の首が絞まっていく。三度目の断罪が終わったとき、王太子はついに、最悪の言葉を口にする。
全一話完結/約10,000字