あらすじ
八人組アイドルグループ《Palette Loop》の八代紗良。
ライブへ行き、撮影が許された曲ではスマホを構える。帰宅したら、紗良の格好いい瞬間も、その直後に笑った顔も、どこまで残すか迷いながら動画を編集する。
推しは、ステージの向こうで輝いてくれればいい。
それ以上を望んだことはなかった。
一方、大学ではゼミ仲間の倉田佳奈と、発表資料を直したり、昼飯を食べたりする普通の毎日を送っていた。
――全員握手会で、アイドルの花瀬みうから、
「……寺尾くん?」
と、大学でしか呼ばれない名前を呼ばれるまでは。
ゼミ仲間の倉田佳奈は、紗良と同じ《Palette Loop》のメンバーだった。
大学では友達。ライブではファンとアイドル。
その秘密を守りながら二つの生活を行き来しているうち、航が撮った紗良の短い動画が大きく広がり、ついには紗良本人にも「動画を作っている寺尾航」の名前が届く。
そこから少しずつ、三人の距離が変わり始める。
直感のまま試し、もっと良くなりたい紗良。
「可愛い」を偶然ではなく、自分の技術として作ってきた佳奈。
好きなものはちゃんと見たい。でも、好きだからといって自分のものにはしたくない航。
ライブ、大学、動画、就活、研究、八人で過ごす何でもない日。
推しとして好きだった相手。
友達として知っていった相手。
そして、自分を好きになってくれた人。
三人の「好き」は、同じタイミングでは恋にならない。
これは、推しを撮っていた大学生が、アイドルを「推し」だけではなく一人の人間として知り、自分の方も知ってほしいと思うようになるまでの、大学生活とアイドルのラブコメ。