あらすじ
花粉に覆われた世界が、静けさを取り戻して十年。
人類の八割は杉人間へと姿を変え、争いも飢餓もない森で、ただ陽を浴びて暮らしていた。
その中央に、かつて「花粉の王」と呼ばれた男が立っている。
だが、この数ヶ月、彼には一つだけ気がかりがあった。
杉人間たちが、同じ夢を見る。
白い部屋。天井まで届く巨大なガラス窓。その向こうに立つ、一人の少女。
誰も彼女に会ったことがない。それなのに、全員が彼女を知っている。
そしてある夜、森のどこかで誰かが叫んだ。
「少女が……夢の中で喋った」
――「お父さん」と。