あらすじ

学都ヴェレン、学生通りの外れ。 そこに、献立表のない一軒の飯屋がある。 店の名は――「馥郁たる紙片亭」。 今日何が出るかは、店主ヴァルジャ・ホイットの気分次第。 けれど、この店には一つだけ変わった決まりがある。 **「店主の知らないレシピを持ってくれば、その日の飯はただ」** 船乗りが故郷の魚料理を書き、 行商人が遠い村の煮込みを持ち込み、 学生が母親から教わった豆の鍋を紙片に記す。 文字の書けない者からは、ヴァルジャ自身が聞き書きする。 そうして十三年。 元は製本屋だった店の壁一面に並ぶ小さな抽斗には、千枚を超える料理の「紙片」が集まった。 北国の酸っぱい鍋。 西の平原の骨と根菜の煮込み。 南の豆と油の料理。 香辛料の香る湾岸の汁物。 同じような料理でも、土地が変われば材料が変わる。 作り方が変わる。 そして、その皿を食べてきた人々の暮らしも変わる。 料理人であり、かつて地誌を学んだヴァルジャは、その千枚の紙片を一冊の本にまとめることにした。 珍しい宮廷料理でも、英雄の祝宴でもない。 誰かの家で昨日も作られ、 おそらく明日も食卓に並ぶ、 名もなき日々の料理を。 本書に載る料理は、すべて店主自身が作って確かめたもの。 「適量」はなし。 「目分量」もなし。 材料、分量、火加減、手順まで記された、実際に作ることのできる異世界料理集。 そして一枚一枚のレシピには、 その料理を店へ運んできた人の、小さな物語が残されている。 料理を食べれば、その土地が見える。 レシピを読めば、そこに暮らした人が見えてくる。 これは架空世界エルデーンの小さな飯屋に集まった、 千枚の紙片から世界の食卓を覗く料理・民俗誌。

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小説を読もう2026/09/20
  • 現在の作品馥郁たる紙片亭の千枚台所~料理人ヴァルジャと、千枚のレシピが語る世界の暮らし~