あらすじ
「今日だけや」
「一杯くらいなら大丈夫や」
「朝まで付き合えよ」
39歳のひろきは、酒に弱く、ギャンブルにも弱い。
それでも幼なじみたちが集まる「南河内連盟隊」から誘われると、いつも断ることができなかった。
一千万円を超える麻雀の負け。
繰り返す無断欠勤。
増えていく仕事のミス。
失われていく会社での信用。
そして、遠ざかっていく「結婚して家庭を持つ」という夢。
それでも彼は、仲間たちと酒を飲み続けた。
――事故が起こる三日前までは。
ある金曜日の午前五時。
大量の酒が残った身体で、ひろきは車のハンドルを握っていた。
「少しくらいなら、大丈夫だろう」
その一瞬の判断が、すべてを変える。
道路に飛び出してきた高校生。
急ブレーキ。
間に合わない。
少年は、まだ生きている。
ひろきには救急車を呼ぶことができた。
助けることもできた。
だが、彼の頭に浮かんだのは――
「捕まる」
「仕事を失う」
「人生が終わる」
恐怖だった。
ひろきは、その場から逃げた。
そして数時間後、警察から告げられる。
「被害者は亡くなりました」
なぜ、ひろきは酒を飲み続けたのか。
なぜ、何度も断る機会があったのに断れなかったのか。
なぜ、事故のあと助けずに逃げたのか。
これは、突然人生が壊れた男の物語ではない。
小さな「まあいいか」を積み重ね、
何度も人生をやり直す機会を自分自身で捨て続けた男が、
最後に奪ってしまった――
誰かの未来と、自分自身の未来を取り戻そうとする物語。
「飲んだら乗らない」
「乗るなら飲まない」
「飲酒運転をさせない」
その言葉の重さを、ひろきは自分の人生を失って初めて知る。
――もう、逃げない。
――もう、繰り返さない。
――二度と、誰かの未来を奪わない。