あらすじ
一四九九年、ローマ。
二十四歳のミケランジェロは『ピエタ』を完成させ、マリアの胸元に生涯唯一の署名を刻んだ。
MICHEL. ANGELVS. BONAROTVS. FLORENT. FACIEBAT (フィレンツェのミケランジェロ・ブオナローティ、これを作れり)
それは、人間の剥き出しの死を表現した先祖ドナテッロの泥臭さを、完璧な大理石の漢文で上書きする挑戦状であった。
「絵画は女々しい仕事だ」と豪言し、ダ・ヴィンチとの壁画競作に挑んだ巨人の傲慢。
だが八十八歳の絶筆『ロンダニーニのピエタ』において、彼は先祖のリアルな生の吐息へと美しく先祖返りしていく。