あらすじ
記憶を一時的に外部へ預けられる技術が実用化された、近未来の日本。岐阜の地方都市で、灯野悠は亡き父の遺した零細の記憶預託施設「預忘所」を継いでいる。二階の棚に並ぶ四百六十二個の箱は、そのほとんどが、預けた本人の二度と取りに来ないものだ。
ある日、預け主の名前も日付も空白の記憶が一件、届く。 同じ日、一人の女から電話がかかってくる。自分の名前が、思い出せない――。
忘れることと、忘れられること。預かることと、返すこと。 静かな四季をかけて、ひとつの家族の空白が、ゆっくりと形を取り戻していく。