あらすじ
国際再保険市場が、日本に「黒」のタグを付けた。
制裁国でも、紛争地でもない。地殻と気候のデータが、「ここは、もう持てない」と告げただけだった。
損害保険は、事業も、車も、家も、「やってみよう」と言える下地だった。それが引き受けられなくなった国で、保険料は上がり、免責は増え、人は車を使わなくなり、会社は挑戦をやめ、町は静かに空になっていく。
誰も、何も禁止していない。誰も、悪者ではない。
大手損保のリスクコンサルタント・鳴海恭平は、その「黒」を社内で先に作った男だった。感情を排して、数字だけで人を選別する仕組み。それが、いま、国全体に使われている。
保険がなくなったとき、世界は何を失うのか。
線を引いた人間は、もう一度、線を引き直せるのか。
災害の起きない、静かなディストピア。