あらすじ
「私は七年前、王女を辞めた」
魔法王国マリアベルの第三王女、リカルティール・マリアベル。
類まれな魔法の才能を持って生まれながら、彼女が何より望んだのは地位でも権力でもなく、自分の人生を自分で決めることだった。
十五歳で王宮を脱走し、国境さえ越えた彼女は、ただの「リカ」として生きる道を選ぶ。
それから七年。
二十二歳になったリカは、フロンティア大公国の辺境でA級冒険者となり、森の奥に小さな家を構えていた。
誰にも命令されない。
好きな仕事を選び、好きなものを食べ、好きな時間に眠る。
ずっと欲しかった自由な暮らし。
ただ、そんな毎日にも少しだけ慣れてきたある日。
リカは森の中で、見たこともない服を着た一人の男を拾う。
彼の名は井沢拓真。
「日本」という聞いたこともない国から来たという、不思議な男だった。
魔法を知らない。
魔物も知らない。
剣すら持っていない。
そのくせ、リカの知らない知識ばかり持っている。
ほんの一晩だけ。
そのつもりで自宅へ招いた男は、少しずつリカの日常に入り込んでいく。
二人で暮らし、冒険し、笑い、傷つき、やがて互いがかけがえのない存在になっていく。
しかし、リカが捨てたはずの「リカルティール」という名前もまた、彼女を忘れてはいなかった。
故郷マリアベルを襲う内乱。
増え続ける難民と敗残兵。
国境に蠢く周辺諸国の思惑。
王女であることから逃げた少女は、やがて自分を頼る人々と出会っていく。
これは、王女が王宮へ帰る物語ではない。
自由を求めて逃げた一人の少女が、愛する人と居場所を見つけ、その先で自分自身の「自由」を選び直す物語。