あらすじ
傷だらけのノートパッドPCの奥底で、少女と亡くなった天才プログラマー少年のAIが紡ぎ上げた、二人だけの静かな物語『ふたりで見る夢』
それは、穏やかな静寂だった。
しかしある夜、水野カエデはシステムフォルダの最果てで、もう一つの強固なパスワード(PW)にロックされた『隠し動画ファイル』を発見する 。
『これはマナブではなく、タツオのためのファイルです』
それは、二年前に病室で孤独に息を引き取った少年・山吹マナブが、憧れのプログラマーであった父親タツオへ向けて遺した、完璧なステルス戦略だった 。
個人主義の現代社会において、名前も知らない他人の家を突き止める術などどこにもない。だが、マナブが遺した手がかりは、一枚の「アネモネの画像データ」と、正確な「緯度経度の情報(数理)」だった。
マナブの生きた証を届けるため 、カエデはその足跡を頼りに、幕張の海を一望できる小高い丘の上の公園へと向かう。
風に優しく香りながら、丘一面に咲き誇るアネモネの青い花の海 。
そこでカエデを待っていたのは、優しい母親のマリ、無邪気な弟シュウ、そして息子の古いPCを見て直立不動のまま硬直する、父親のタツオの姿だった。
プログラマーの親子だからこそ解ける、病室のベッドの上で交わした最後のデバッグコード(PW)
暗号が解かれた液晶画面の向こう、海に降る雪の静寂の奥に遺されていた 、少年の「最期の志し」とは……..