あらすじ
小学5年生の牧田架純(まきた かすみ)は、家庭の中の小さな理不尽に嫌気がさしていた。
「手がかからない良い子」でいると、損ばかりする。
姉とのチャンネル争い、母親からの我慢の強要。胸の中に冷たい不満を溜め込んだ架純は、お小遣いポーチを握りしめ、日曜日の朝に一人で家出を繰り返す。
目的地はない。
大人用の切符を買い、飛び乗るのはいつも水色の電車——京浜東北線。
しかし、スマートフォンの電源を切り、電車に揺られた先に待っていたのは、見慣れた日常とはどこか違う、恐ろしくも温かい「現場」だった。
刀を握る人々の殺気。
大砲の音と、悲しそうな目ををした少年。
煙に包まれた街で手渡された甘い飴玉。
雨のホームで我が子の名を呼んで泣き崩れる母親。
ただの逃避行だったはずの電車旅。
日常から遠く離れた場所で市井の人々の思いや悲しみに触れた架純は、少しずつ自分の足で歩み寄る勇気を得ていく。
自分を取り巻く退屈で理不尽な「日常」とは、一体何なのか。
そして、その当たり前の日々を守るために、自分にできることとは——。
小さな少女が自分の目と足で世界の重みを知り、未来へ向かって一歩を踏み出す、心温まるジュブナイル