あらすじ
私が救われるほど、彼らは生きられなくなる。
人の感情のなかに、微小な生命が棲む世界。
奈緒の孤独に広がる海で、言葉を持つ知的生命が発見された。
けれど、奈緒の心が回復するにつれて、その海は縮んでいく。
彼女が手放したい苦しみは、彼らにとって、かけがえのない故郷だった。
そこには、言葉を交わした相手がいる。
大切な家族がいて、明日も生きたいと願う命がある。
存在を知ってしまった今、ただ消えていくのを見ていることはできない。
彼らを助けたい。
それでも、自分が苦しみ続ける約束はできない。
誰かの未来を守るために、私は自分の未来を諦めなければならないのか。
ひとりの回復と、ひとつの文明の存続。
どちらも切り捨てられない奈緒は、自分の孤独に生まれた世界と向き合っていく。
「幸せになりたい」という願いが、命の重さを問いかける心理SF。