あらすじ
ダンジョンが出現して30年。攻略は探索者の仕事、維持は公社の仕事——世界はまだ、後者をよく知らない。
ダンジョン設備管理公社の点検員・灰田誠(46)は、勤続28年無事故。保守規程を守り、指差し確認を欠かさず、伝票を書き、定時で帰る。本日の作業は第99層の非常灯交換。いつも通りの球替えだ。
その頃、人類最高戦力のS級パーティが、「到達不能」とされた第99層に配信中、史上初めて踏み込んだ。決死の突入の先で、同時視聴200万人が見たものは——脚立の上で蛍光灯を換える、作業服のおっさんだった。
切り抜きは一夜で4700万回再生。公社は「何も話すな」と口を閉ざし、探索者協会は「業者用経路を公開しろ」と迫り、配信界隈は謎のおっさんの正体を追う。当の本人は何も知らず、今日も現場で指を差す。
なぜ規程を守る作業員を魔物は襲わないのか。規程を書いたのは、誰か。無自覚のまま世界の注目を集めた点検員だけが、ダンジョンという「施設」の正体に、いちばん近い場所にいる。
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