あらすじ
「デリヘル。通称、デリバリーヘル。地獄を届ける仕事だ。」
戦争。
国家崩壊。
疫病。
飢饉。
大規模災害。
悪魔から依頼を受け、人間界に地獄を作って届ける。
俺は、そんな仕事を請け負う名門企業の一員だ。
顧客は悪魔。
報酬は人間の魂。
失敗すれば違約金として自分の魂を取られる。
文字通り、命以上に重い仕事。
時給は6666円。
高いのか安いのか。
それでも地獄作りでそれなりの実績を積んできた俺に、ある日ひとりのサキュバスから長期の指名依頼が入った。
依頼内容は――
『この世で最も苦しい恋愛を体験したい』
誘惑すれば男は手に入る。
金ならいくらでもある。
身分も距離も障害にはならない。
そんな彼女が欲しがったのは、金でも魔法でも作れない「本物の愛」だった。
こうして俺は、彼女を客として連れ歩きながら、今日も様々な地獄を作る。
「どんなに貧しくても、二人なら幸せ」
そんな言葉を信じるのは簡単だ。
だが、本当に食べるものがなくなったら?
三日なら分け合えるかもしれない。
一週間なら、まだ愛を語れるかもしれない。
では、一ヶ月なら?
極限まで飢えた人間は、泥水一杯だって奪い合う。
愛情も。
友情も。
家族も。
地獄の中では、驚くほど簡単に形を変える。
人間が壊れるところなら、もう嫌というほど見てきた。
俺が見たいのは、その先だ。
どれだけ追い詰められても。
どれだけ損をしても。
それでも誰かを選べる人間はいるのか。
そして――
どんな地獄の中でも、
決して壊れない恋はできるのか。
地獄を作る男と、地獄を求めるサキュバス。
これは二人が、世界中の地獄を巡る話。