あらすじ
特別審議室の扉が重々しく開き、財務省の制服組や法制局の幹部たちが次々と足を踏み入れてきた。
いよいよ、「Asset-Flow Cycle」の構想を現実の法案へと昇華させるための、霞が関の深層における最終かつ最大の関門――「法制局との実務折衝」が始まろうとしていた。
主席主計官は、テーブルの中央に仁王立ちし、冷徹な眼光を放つ法制局のベテラン参事官を見据えた。
「……主席主計官、話はあらかじめ聞いていますがね」
参事官は分厚い法規の束をパタンと音を立てて閉じ、鼻で笑った。
「住宅金融支援機構の機能を拡張し、一般会計から独立した『動的財源プール』を作り、そこから個別還付を行うだと? 冗談ではない。そんな怪しげな金融工学の実験場を国家のガバナンスの枠外に作れば、会計検査院の監査で一発レッドカードだ。そもそも、単年度主義の原則をどうやって回避するつもりですか」
室内の空気が一瞬で凍りついた。法的な壁という最も分厚い防壁が、彼らの前に立ちはだかった瞬間だった。