あらすじ
とある会社の休憩スペース。自動販売機が低く唸るような音を立て、隅には背の高い観葉植物が形ばかりに置かれていた。窓から差し込む穏やかな午後の陽が床に淡い光の帯を作り、その中に細かな埃がゆっくりと舞っていた。
その一角で、一人の男が立ち机に肘をついて、スマートフォンの画面を見ながらにやにやしていた。
と、そこへ先輩が一人、休憩スペースに入ってきた。彼は後輩の姿を認めると、いつもの調子で声を掛けた。
「おいっす」
「ああ、お疲れ様です」
後輩は顔を上げ、軽く会釈した。
「なんか機嫌よさそうだな」
先輩は自動販売機の前に立ち、横目で後輩を見ながら言った。
「まあ、ふふふ」
その反応に先輩は片方の眉をわずかに上げ、自動販売機のボタンを押した。ガコンと小気味よい音が響き、取り出し口に缶コーヒーが落ちた。
「どうしたんだよ、そんなににやけて」
「え? へへ、いや、実はこないだ、妻と思い出の場所に出かけたんですよ」
「へー、思い出の場所。いいじゃん」