あらすじ
「解決編の津久井」――関係者を一堂に集めて謎を解く古風なやり方で、警察さえ頭を下げる名探偵、津久井九十九。 その解決編を、手書きの速記で一字一句書き留める、いわば現代のワトソン役が、入社三年目の真壁文だ。
そして文だけが知っている。津久井の解決編には、毎回かならず、嘘がひとつ混じっている。
犯人はその嘘を訂正せずにいられず、自分から尻尾を出す。最初は、そういう手口なのだと思っていた。 けれど、五十八件の事件のうち、誰ひとり引っかからなかった嘘が十一個ある。しかも空振りの日に限って、津久井は帰りの車で、決まってこう訊くのだ。
「今回の記録は、次の号に載るんだよね?」
嘘は、いったい誰に向けられているのか。毎月それを活字にしている私は、誰の手伝いをしているのか。 十一個の嘘を並べたとき、文は、津久井がまだ解いていない「最初の事件」の輪郭に触れてしまう――。
名探偵の嘘を数える、連作ミステリー。