あらすじ
――朝、目が覚めると、頬が濡れていた。
昨日の自分が、何をしたのか、思い出せない。
鳴海朔には、秘密がある。
記憶は、ある時間を境に、ぷつりと途切れる。
気づけば知らない場所にいて、覚えのない疲れだけが、体に残っている。
彼をこの世界につなぎとめているのは、たった一冊の〈共有メモ〉だけ。
――ある夜。そのメモの、いちばん下に。
誰が書いたのかも分からない、灰色の一行が、灯った。
【よくできました。あと三問】
なぜ、この一行は、消しても消えない。
なぜ、僕の記憶は、こんなにも途切れる。
問いは、事件を呼ぶ。
事件は、逃げ出したはずの、家族の影を連れてくる。
消された記憶。密室。偽られた時刻。そして、"別人になった"親友。
誰の痛みも、道具にはさせない。
たとえ、それが――自分自身の、いちばん古い傷でも。
命じられてではなく、自分の意思で。
彼は、探偵になる。
事件が、一つ解けるたび。
あの喫茶店の窓辺に、名もない花が、一輪、増えていく。
救えた人の。救えなかった人の、数だけ。
『オルフェウスの共有メモ ―SPLIT LOG―』
――そして、まだ誰も知らない。
この街の、"あちら側"に、何が待っているのかを。
あなたは、"自分が誰か"を、証明できますか。