あらすじ
「セレナ。君との婚約を破棄する」
王太子アレクシスから突然告げられた婚約破棄。
理由は単純だった。
辺境伯家の娘であるセレナよりも、王太子妃に相応しい令嬢を見つけたから。
セレナは反論することなく、婚約破棄を受け入れた。
ただ、一つだけ確認する。
「では、婚約者として私が行っていた仕事も、これで終了ということでよろしいでしょうか?」
穀物の輸送。
鉱石や木材の調達。
武器や薬品の手配。
商会との交渉。
辺境の魔物対策。
それらはすべて、セレナが婚約者として密かに行っていたことだった。
「もちろんだ。君はもう私の婚約者ではないのだから」
その言葉を聞いたセレナは、翌日からすべての仕事をやめた。
最初は、誰も気にしなかった。
けれど、少しずつ歯車が狂い始める。
届かなくなる物資。
滞る輸送。
不足する武器。
増えていく魔物の被害。
そして王太子は、ようやく気づく。
自分が婚約破棄したのは、一人の令嬢だけではなかった。
王国を陰から支えていた存在、そのものだったのだと。
これは、捨てられた令嬢が復讐する物語ではない。
自分の価値を誰かに認めてもらう必要がなくなった、一人の女性が、自分自身の人生を選び直す物語。