あらすじ
「君が笑顔なら、それでいい。」
高校二年生の黒瀬湊には、人には言えない秘密がある。
人に触れることで、その人が抱えている不安や悲しみ、怒り、寂しさといった負の感情を、自分の中に取り込むことができるのだ。
湊が痛みを引き受けると、相手は少しだけ楽になる。
だから湊は、誰かが苦しんでいると放っておけなかった。
自分が苦しくなっても、それで誰かが笑えるなら、それでいい。
そんな湊の前に、昔からの同級生・小野寺美咲がいる。
人付き合いが苦手で、一人でいることに慣れていた湊。
そんな彼に、美咲は少しずつ距離を縮めていく。
一緒に帰るようになり、くだらない話で笑い、放課後を二人で過ごす。
いつしか湊にとって、美咲といる時間はかけがえのないものになっていた。
そして二人は、互いの想いを伝え合う。
幸せだった。
この時間が、ずっと続くと思っていた。
――けれど。
その翌日、美咲が突然学校を休む。
やがて湊は知ることになる。
美咲が抱えていた秘密。
病院で告げられたのは、すでにステージIVまで進行した病気だった。
誰かの痛みを引き受けることはできても、病気そのものを治すことはできない。
それでも湊は、美咲の苦しみを少しでも減らそうとする。
いつものように。
自分が傷つくことを、当たり前のように受け入れて。
しかし、美咲は気づいてしまう。
自分を救おうとする湊のほうが、ずっと苦しんでいることに。
「どうして、自分ばっかり苦しくなるの?」
誰かを救うことしか知らなかった少年と、残された時間を生きようとする少女。
やがて二人の立場は、静かに逆転していく。
「今度は、私が――」
ずっと誰かの痛みを背負ってきた湊が、最後に知ることになる。
人を救うことだけが、優しさじゃない。
誰かに救ってもらうこともまた、大切なことなのだと。
これは、誰かを救い続けた少年が、最後に一人の少女から救われる物語。