あらすじ
客十二人。出演料ゼロ。交通費八百四十円。エントリー料千円。
結成八年目の漫才コンビ「夜汽車」は、十一組中十一位だった。
久世は、笑いを数えている。
客数、出番順、最初の笑いまでの秒数、小笑い、中笑い、大笑い、拍手、順位。
八年間、千本以上の舞台を記録してきた。
何がウケたのか。なぜ滑ったのか。なぜ先週三位だったネタが、今日はビリなのか。
理由が分かれば、直せると思っていた。
相方の緒方は言う。
「ビリでも面白いことあるだろ」
二十八歳。後輩は先に売れていく。金は減る。客は増えない。
努力した分だけ報われるほど、この世界は親切ではない。
それでもネタを書く。滑る。直す。また舞台に出る。
才能があるのかなんて、まだ分からない。
ただ、二人ともまだ辞めていない。