あらすじ
ダンジョンに潜る奴らは、魔物を倒す方法には詳しい。
帰り道を直す奴は、ほとんどいない。
三十九歳の一人親方・荒瀬修が持つスキルは《施工済》。
自分で直した橋や通路を、ダンジョンの変動から守るだけ。
剣も魔法も使えず、魔物の前では護衛の後ろに隠れるしかない。
ところがある日、崩れた橋の向こうに取り残された探索者を、わずかな時間の応急工事で地上へ帰した。
「おっさん、どうやってボスを倒したんだ!?」
「倒してへん。道、直しただけや」
救助映像が広まり、届き始めたのは討伐依頼ではなく、工事の注文だった。
帰れない階層に帰り道を。
運べなかった資源に搬出路を。
危険すぎて使えない場所に、今日も通れる一本の道を。
修が欲しいのは英雄の肩書ではない。
工具をそろえる金と、自分の作業場と、週に一度の休みだ。
護衛役の探索者、口の悪い運搬屋たちと始める、小さな「帰り道工務店」。
だが、初めて大きな仕事を終えた日、まだ誰も入っていないはずの深層で、修の会社と同じ工事標識が見つかって――。