あらすじ

「いくら払えば、引き受けてもらえる」 婚約破棄の祝宴を出たリディアに、廊下で待っていた北の公爵アレクシスはそう訊いた。広間の誰もが彼女の顔を見ていた夜、彼だけが、白い痕の走る右手を見ていた。 王宮の灯が六年間一度も揺れなかったのは、伯爵令嬢リディアの右手が、その揺れを冷えとして受けていたからだ。そうと知らない王太子は「帳面係はいらない」と婚約を破棄した。リディアは自分が署名した一頁目の契約を撤回し、その夜のうちに王宮を出る。翌朝、王太子の朝湯は水になった。 雇いの契約書は、給金の欄だけが白かった。自分の値を書けずに「院と同じで結構です」と言うと、公爵は四十四を消して四十五と書く。「下げろと言われるたびに、一枚足す」。条項には「北では、契約官の身体に線を受けさせない」「雇い主は、雇った者に夜食を出す」。 凍った水差しと一人きりの薬師から始まる北の暮らしで、リディアは井戸と灯を直していく。灯の消えていく王都から伸びる取り戻しの手は、人前で、一言で退ける。 そして三十日目の夜、もう一度差し出された白い欄。今度は、期間の欄だった。 全150話・毎日更新。 (旧題:婚約破棄された祝福契約官、王家の奇跡をお返しします)

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カクヨム
カクヨム2026/10/06
  • 現在の作品婚約破棄されて辞めた帳面係ですが、北の公爵様が給金を下げさせてくれません