あらすじ
四十三歳の会社員・笠縫芳乃は、母が遺した喫茶〈灯待〉を閉めるため、故郷へ帰ってきた。
そこで待っていたのは、高校時代に好きだった二歳上の先輩・宇津瀬礼実。母の店を手伝っていた彼女との再会は、二十六年ぶりだった。
「店を閉めるまでの、一か月だけ」
そう決めて始めたお別れ営業。昔の好みを覚えている嬉しさと、知らない年月がある寂しさ。珈琲を淹れ、買い出しに出かけ、並んで食事をするうちに、芳乃は今の礼実にも惹かれていく。
けれど、好きという気持ちだけでは、古い店も二人の暮らしも続けられない。東京の仕事、店の修繕費、介護を経験した礼実の生活。そして、あの日、伝えられなかった想い。
閉店まで、あと何日。
母の店に別れを告げるはずだった秋、芳乃は初めて、自分がここでどう生きたいのかを考え始める。
珈琲の香りと田園の風景に包まれた、大人の女性二人が恋と暮らしを選び直す再会物語。