あらすじ
父を泥棒と呼んだ男は、今では人々を救う英雄だった。
十八年前、支援団体の金を持ち逃げしたとされ、姿を消した父。壬生航は、家族を捨てた父を憎みながら、引っ越し会社で働いていた。
ある日、家財整理の現場で父の手帳を見つける。そこに残されていたのは、父の無実を訴える言葉と、団体を率いていた久世誠一郎の名前だった。
現在、巨大な財団の顔として尊敬を集める久世。父の過去を調べ始めた航は、彼の善意によって暮らしを支えられている人々と出会う。妹の灯里も、心を通わせていく三崎由奈も、その一人だった。
真実を明かせば、大切な人の暮らしまで壊してしまうのか。
迷い、失敗し、それでも航は進む。その人柄に惹かれた仲間たちも、自分の無力さともがきながら、彼を支える力を身につけていく。
やがて、一人の引っ越し屋の問いが、英雄の地位を揺るがし始める。
「貴様の善意を終わらせる」
父の名を取り戻し、奪われた家族の時間に決着をつけるための、復讐と再生の物語。