あらすじ
南の地にある古びた施設で、完成体No.02――フェリア・エールが目を覚ます。
彼女は人間によって造られた存在だった。
龍の血、上位吸血鬼、上位サキュバス、上位夢魔。そして、神の死骸。
人の手で造られたその身体には、人間の常識を遥かに超えた再生力と頑丈さ、莫大な魔力、そして他者の「欲望」を奪い、あるいは与える異能が宿っていた。
しかし、フェリアには自分が何のために生きるのか分からなかった。
胸の奥には、理由も分からない憎悪、憤怒、復讐、怨念が渦巻いている。
そんな彼女が初めて見た外の世界は、青い空と緑の大地、そして人々の笑顔に満ちていた。
やがてフェリアは人間の街フェルンドットへ辿り着く。
そこで出会ったのが、神の意思によって生み出された勇者――カイアス・セレニティアだった。
本来なら交わるはずのなかった二人。
しかし、その出会いは偶然ではない。
神によって、最初から定められていた運命だった。
カイアスはフェリアを「フェル」と呼ぶ。
その呼び名を、フェリアは心の底から気に入った。
二人は共に食事をし、街を歩き、依頼を受け、時には川辺で遊ぶ。
誰かと一緒に笑うこと。
誰かに心配されること。
誰かと明日の約束をすること。
フェリアにとって、それらはすべて初めての経験だった。
胸の奥にある憎悪や復讐心が消えたわけではない。
それでもフェリアは少しずつ気づき始める。
もしかしたら、こうして誰かと過ごすことこそが、自分の本当の幸せなのではないか。
しかし、二人が穏やかな時間を過ごしている間にも、世界では静かに異変が始まっていた。
東の零式魔導国家ジェスタでは、完成体No.01が囚われ、無尽蔵の魔力源として利用されている。
北の絶対零度アイスヘイルでは、完成体No.03を封じていた氷に亀裂が入り始める。
そして最北端の魔王城では、最強の白ガーゴイルを目指して勇者が戦いを挑んでいるという噂が流れていた。
三体の完成体。
神の意思によって生み出された勇者。
そして、世界の運命を裏から動かす神々。
やがてフェリアは、自分が何者なのか、なぜ生み出されたのか、そしてカイアスとの出会いがなぜ定められていたのかを知ることになる。
これは、世界を滅ぼせるほどの力を持つ少女が、初めて「失いたくないもの」を見つける物語。
そして最後にフェリアは選ばなければならない。
復讐か。
支配か。
破壊か。
それとも――
自分自身の意思で、大切な人と世界を守るのか。