あらすじ
「甘いものが食えないなら、海軍なんて辞めてやる!」
――昭和十八年、正月明け。
大日本帝国海軍が誇る巨大戦艦『奥羽』。その奥深く、クレゾール臭漂う歯科治療室に、今日も口を押さえた悲痛な顔の将兵たちがやってくる。
部屋の主は、歯科医科士官・藤澤芳樹少尉。 小柄で笑うと少年のようだが、治療の腕前は超一流。ただし重度の甘党で、羊羹やプリンのためなら軍規ギリギリの脅迫も辞さないワガママ坊ちゃん。
そんな彼の手綱を握るのは、八歳年上の衛生下士官・野々山太郎二曹。 「坊ちゃんの世話を焼く」ためだけに軍に戻ってきた彼は、小言を言いつつも坊ちゃんへの忠誠心と独占欲を隠さない。
「奥歯から声が聞こえる機関科の下士官」
「高度四千メートルでパイロットを襲う謎の歯痛」
「深夜の通路を彷徨う、青白く光る人間の歯」
そして
「沈んだ軽巡の遺体、奥歯に刻まれた不可解な数字」
持ち込まれる奇妙な事件の数々を、藤澤は「歯科医学の専門知識」と「甘味への執念」で見事に解き明かしていく。
しかし、戦況の悪化とともに、大好きな甘味は姿を消し、過酷な戦争の影が二人にも忍び寄り――。
腕利き甘党坊ちゃん軍医 × 世話焼き過保護な下士官従者。
激動の海を駆け抜けた二人の、甘くて少し切ない海軍メディカル・ミステリ!
※全48話・完結済みです。安心してお読みいただけます。