あらすじ
ダンジョンから持ち帰られた魔物素材、薬草、武器、魔石――。
冒険者が命懸けで手に入れた「戦利品」を鑑定し、分類し、正しく国へ申告する。
それが、冒険者ギルド併設の通関塔で働く通関士、クリア・ランスの仕事だ。
「その戦利品、正しく申告させていただきます」
気弱で、すぐに縮こまる。
冒険者から見れば、少し頼りない通関士。
けれど、窓口に立った瞬間だけ、彼女は別人のように正確な判断を下す。
魔物素材の分類。
関税率の判断。
知られていない制度の活用。
そして、ときには、誰も知らない危険を見抜くことも。
クリアには、誰にも知られてはいけない秘密がある。
それでも彼女は、今日も窓口に立つ。
冒険者の利益を守るため。
国の制度を正しく運用するため。
そして、制度を知らない人にも、その制度が持つ「救う力」を届けるために。
だが、ダンジョンを巡る利権、国家間の思惑、冒険者と国の対立に巻き込まれる中で、クリアは少しずつ気づいていく。
正しい制度だけでは、人を救えないことがある。
それでも――。
人と国、そのどちらも犠牲にしない道を探す。
これは、剣でも魔法でもなく、
「通関」という仕事で人を救おうとする、一人の少女の物語。