あらすじ
2029年。
大学の小さな実験で、説明のつかない0.4℃の温度変化が観測された。
再現できる研究室と、できない研究室。
同じ図形を見ても、違う意味に受け取る人々。
やがて研究者たちは気付く。
同じ記号を見て、
同じ意味を理解し、
同じ結果を予想した時――
現実そのものが、わずかにそれへ近づく。
現象は「認識固定」と名付けられた。
十数年後、それは魔法と呼ばれた。
医療に使われた。
学校で教えられた。
国家規格になった。
国境を越えた。
歴史さえ変えた。
そして2064年。
同じ人間が、ある街では死んでいて、別の街では生きている。
同じ建物が、三階建てであり、四階建てでもある。
隣にいる人間とさえ、同じ世界を共有できない。
世界整合局の調査員・雨宮ミナと、記録保存技術者・相沢朔。
崩壊した現実を前に、二人は最後の修復計画を開始する。
残されたのは、研究記録、病院のカルテ、学校教材、監視映像、個人メッセージ。
そして、別々の時代の記録に繰り返し現れる――
左薬指の、指輪の跡のような痕。
これは、世界が壊れるまでの記録。
そして、
世界を直したあとに何が残ったのかを記録した物語。