あらすじ
死者の声が聞こえる。
それだけが、ラファエル――ラフィに与えられた唯一の才能だった。
火も、水も、治癒も、身体強化もまともに使えない。
死者の声を聞くことしかできない彼は、故郷の小さな教会と孤児院で働きながら、慎ましく暮らしていた。
そんなある日。
孤児院の冬支度のため薬草を採りに入った森で、ラフィは魔物に追われ、古びた聖堂へと逃げ込む。
その地下にあったのは、一基の石棺。
そしてラフィは、その中から聞こえてくる。
――まだ、終われない。
死者の強い未練に手を伸ばした瞬間、これまで声を聞くだけだったラフィの力は、初めて死者に肉体を与えた。
蘇った男には、名前も過去もない。
けれど、なぜか剣だけは異常なほど強かった。
やがて「0(ゼロ)」と名乗ることになった死者とともに、ラフィは故郷を離れる。
死者を支配するためではない。
死者を兵士にするためでもない。
ただ、彼らがこの世に残した――未練を拾うために。
これは、不器用な死霊術師と名もなき死者が、生者と死者の願いを拾いながら歩いていく物語。