あらすじ

「聖杯の管理など、祈りの才ある者なら誰でもできる雑用だろう」 建国祭の大広間。王太子セドリック殿下は、婚約者エレノア・ヴァルトハイムにそう告げて婚約破棄を宣言した。 「かしこまりました。本日付で、聖杯管理官を辞任いたします」 十二年間。毎晩深夜二時に起床し、七柱の神の血を規定の順序・比率・時刻で聖杯に注ぎ続けた。〇・三ドラムの誤差で結界は緩み、順序を一つ違えれば豊穣の加護は死ぬ。年に一度の契約更新、不足分は実家の金庫から自費で補填。――誰にも言わなかった。言っても「女の雑用」と呼ばれるだけだったから。 「引き継ぎ書は三十七冊ございますが、お読みになりますか?」 「……そんなもの、必要ない」 (出ました) エレノアの中には、前世・鷹野詠子(三十四歳・商社経理内部監査・残業中に過労死)の記憶がある。 神々との契約は、祈りではなく帳簿で回っている。そして王国法典第四巻・神事章第九条――『神との契約更新権は、署名者個人に帰属する』。 旅行鞄ひとつで辺境の交易都市へ発つ彼女を待つのは、十二年ぶりの安眠と、やがて訪れる査問会。そして、祖母が遺した赤い線の意味。 陰気と言われた顔色は、ただの慢性的な睡眠不足でした。 帳簿で神を黙らせる、元・聖杯管理官の痛快な再出発録。

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小説を読もう2026/10/06
  • 現在の作品聖杯に神々の血を注ぐ仕事、十二年間わたくしが一人でやっておりました。――「誰でもできる雑用だろ」と仰るので、本日付で辞めさせていただきますね ~前世経理の聖杯管理官は、帳簿で神を黙らせる~