あらすじ

「私、あんたのこと、ずっと嫌いだった」 十年前の夏、僕は灯にそう言われた。 高校最後の夏休み。 海辺の小さな町で育った僕と灯は、いつも一緒だった。 東京の大学への推薦が決まった僕に、灯は突然「東京へ行け」と言った。 二週間ぶりに返ってきたメッセージ。 左手に巻かれた不自然な包帯。 知らない男の車。 そして、何かを隠しているような、灯の目。 問い詰めても、灯は何も答えなかった。 最後に僕へ残した言葉は、 「ずっと嫌いだった」 だった。 その日を境に、灯は僕の前から消えた。 僕は東京へ行き、故郷を離れた。 灯のことを忘れようとした。 忘れたつもりだった。 十年後。 父の葬儀のため故郷へ戻った僕は、実家の郵便受けに一通の手紙を見つける。 差出人は、灯。 十年前の日付が記された、古い手紙だった。 なぜ、今まで届かなかったのか。 なぜ灯は、あの夏に僕を突き放したのか。 封を開けることができないまま、僕は灯を知る人たちを訪ね始める。 すると、十年前の夏、町で起きたある出来事が少しずつ浮かび上がってくる。 僕が知らなかった事故。 灯が隠していた秘密。 そして、灯が最後まで守ろうとしていた「ある人」の存在。 記憶の中の灯は、僕を嫌っていた。 けれど、手紙に残されていた言葉は、その記憶とはまったく違っていた。 ――手紙は、切手を貼ってこそ手紙なんだよ。 一度、誰かの手を離れた言葉は、もう自分の思い通りには届かない。 十年前、灯が僕に嘘をついた理由を知ったとき、 僕は初めて気づく。 あの夏、僕が失ったと思っていたものは、 本当は灯が命を懸けて守ろうとしていたものだったのだと。 そして最後に僕が読むことになる一通の手紙には、 十年間、誰にも言えなかった灯の本当の気持ちが綴られていた。 それは、愛している人に嫌われることでしか守れなかった、 ひとりの少女の最後の嘘だった。

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小説を読もう2026/10/06
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