あらすじ
「返品対応なんて、誰にでもできる仕事でしょう?」
エルヴァンス王国の魔道具メーカー・マルソア商会で、五年間働いてきたクエラ・トワイフォン、27歳。
彼女の仕事は、客から持ち込まれた魔道具を調べ、返品できる品かどうかを判断すること。
クエラは、どんな返品もいい加減には処理できなかった。
傷はいつついたものなのか。
壊れた原因は何なのか。
内部の部品は本物なのか。
同じ不良品を二度と市場に出さないためには、何を直すべきなのか。
父から教わった「分けて解せば、全てが見える」という言葉を胸に、ひとつひとつの魔道具を丁寧に調べ続けた結果――彼女は「仕事が遅すぎる」と商会をクビになってしまう。
そんな彼女の前に現れたのが、エルヴァンス王国騎士団・国境担当の長、ソノク・シュエールだった。
「君の、その細かさを貸してほしい」
ソノクがクエラに持ち込んだのは、国境で押収された大量の魔道具。
申告された品と、中身が一致していない。
新品のはずなのに、一度分解された痕跡がある。
正規品のはずなのに、使われている魔石が違う。
それは、ただの偽造品ではなかった。
エルヴァンスと、北方のラガッド帝国を結ぶ国境で、密かに広がる魔道具密輸事件。
さらにその裏には、滅亡したはずの魔王勢力の影までちらついていた。
「私は、人を見るのは得意じゃありません。でも――物を見ることは、好き」
返品された魔道具を調べるだけだった女が、国境騎士団にスカウトされ、密輸捜査官として、国境を揺るがす密輸事件を追う。
誰にも評価されなかった「丁寧すぎる仕事」「分解癖」が、他人に思いつかない大きな謎にたどり着く、魔道具職人と騎士の密輸阻止物語。