あらすじ
夫から依頼された恋文の宛先は、代筆屋である私でした。
結婚して三年。「氷の公爵」と呼ばれる夫ユリウスと交わす言葉は、一日に三つだけ。
借金と引き換えに嫁いだ公爵夫人セレナは、正体を隠して街の文具店で「月影の代筆屋」を営んでいる。
規則はひとつ。依頼人の顔は見ない。衝立越しに話を聞き、想いを手紙にするだけ。
ところがある木曜日、衝立の向こうから聞こえてきたのは、聞き慣れた夫の声だった。
「妻に、恋文を書きたい」
私を嫌っているはずの夫が語り始めたのは、私の知らない「私」の話で――。
すれ違い続けた夫婦の、手紙から始まる両片思いの物語。