あらすじ
「まずは、そのコートを脱いでください」
「……会って、三分だが」
魔力ゼロの「糸切り」令嬢イネスは、婚約を破棄され、呪われた辺境伯のもとへ追い払われた。
けれど前世は、博物館の染織品を直す修復士。彼の黒いコートを見るなり、気づいてしまう。
この縫い目、直すどころか、わざと壊されている。
一針ほどくと、六年間凍えていた辺境伯の霜が止まった。
その裏地には、王都の記録から消された三十一人の名前。
彼は、帰れなかった人たちを、たった一人で守り続けていた。
「雇ってください。花嫁としてではなく、修復士として」
ほどけない糸。焼かれたはずの白い旗。隠された事故。
イネスが呪いの正体へ近づくほど、不器用な辺境伯は、彼女自身を大切にしてくれるようになる。
ただし、紅茶の砂糖は入れすぎる。
元婚約者との逆転劇と、冷たい手が温かくなるまでの恋。
全10章、結末まで完結。ハッピーエンド。