あらすじ
昔、あるところに不死の龍がいた。
たった一匹、この世界で唯一にして完全な生命。
完全であるからこそ、途方もない孤独を抱える龍。
だが、その孤独に寄り添う、もう一つの魂があった。
時には瞬きほどの歳月で、
時には気の遠くなるほどの時を隔て、
姿を変えて何度も、何度も、龍と共にあった魂。
ある時は、共に大空を並んで駆ける「龍」として。
ある時は、ただ静かに寄り添い眠る「猫」として。
ある時は、肩を並べて笑い合う「人間」として。
魂は幾度も輪廻を巡り、気付けば番となっていた。
そして離れるたび「また来たぞ」と龍の元へ還ってきた。
――龍と彼は間違いなく、唯一無二の番(つがい)だった。
しかし、幾度と繰り返された転生。
いつもより遅い再会にしびれを切らした龍が、
自ら会いに行ったその先で――「彼」は初めて忘れていた。
数百年、数千年、数万年に渡り共に過ごしてきた龍のこと、
龍との思い出、約束、すべてを。
記憶を失った最愛の番と、すべてを覚えている不死の龍。
「彼が忘れているのならば、かつて彼がしてくれたようにそばにいる」
それが私にできる たった一つのことだった
かつて彼が私を孤独から救い出してくれたように。
今度は私が、きみの隣へと、自らの意志で歩み寄るために。