あらすじ
官渡(かんと)の戦い、終局。
絶対の覇者と謳われた袁紹(えんしょう)の軍勢は、曹操の前に阿鼻叫喚の崩壊を迎えていた。
無能な上層部が我先にと逃げ惑う泥濘(ぬかるみ)のなか、
冷酷な乱世の「不良債権」として戦場に見捨てられた、一尊の巨大な死に体があった。
――河北の誇る天下の猛将、文丑(ぶんしゅう)。
片脚をへし折られ、官兵の朴刀がその首を撥ねようとしたまさにその刹那、
「戦場廃棄物の回収人」を自称する一人の奇妙な男が、その泥水の中に静静と割って入った。
男の手には、現代の法務知識、冷徹な経営データ統計、
そして壊れた槍やサビた刀を甦らせる驚異の「ニコイチリサイクル技術」が握られていた。
「これほど優良な最強の資産を、野垂れ死にさせるなど最大の損失だ。――これよりこの私が、袁紹軍の『破産清算』を執行する」
これは、ただ力任せに暴れるだけの無双譚ではない。
誰もが目を背ける戦場の死体、壊れた甲冑、捨てられた敗残兵すらも「一等の資産」として冷徹にデータ計上し、乱世のパワーバランスを裏から完全に魔改(マカイ)していく、最も硬派で最もスピーディな内政再建戦記である。
味方の裏切り、朝廷の陰謀、曹操軍の圧倒的な包囲網。
迫り来る破滅のシナリオを前に、男は算盤を弾き、刮毒刀(毒を削る小刀)を握り、死体の懐から得た情報で敵の全配置を完全予言してみせる。
全軍の糧食を食らい、男の再生した武器を手に突き進む、新生・文丑の鉄流。
崩壊した敗戦処理の泥沼から、天下一の巨大な地下王国(経済圏)を自らの理知で生々しく再建していく、一人の破産清算人の静かな逆襲が、今ここから幕を開ける。
――さあ、清算の刻(とき)だ。