あらすじ

鼠色の空。  醤油瓶の赤い蓋。  皿の上の、橙の蜜柑。  人生をしくじった者ばかりが流れ着く、寂れた漁村。  筆を折った元小説家の「私」は、そこで名前を名乗らない女と出会う。  女はよく笑い、よく忘れる。  昨日の話も、自分がどこから来たのかも。  路地の猫は、彼女の前でだけ妙な仕草をする。  村の年寄りは、古い言い伝えを口にしかけて、黙る。  私はもう何も書かない。  ただ、見たものを見たままに、紙の端に置いていく。  色と、音と、波の匂いだけを。  にじんだ輪郭は、最後まで線にならない。  これは、名もない渚を描いた、水彩のスケッチです。

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カクヨム
カクヨム2026/10/06
  • 現在の作品海辺のスケッチ