あらすじ
一八八五年、霧のロンドン。
仕送りの途絶えた留学生・宇佐美譲が応募したのは、「通訳求ム、一夜一ギニー」という怪しすぎる貼り紙だった。
雇い主は、東洋の神秘を売りにする偽霊媒・久世小夜。
「英語は一言もわかりません」とよろけながら微笑む彼女の降霊会は、上流階級のあいだで、不思議なほどよく当たると評判になっていた。
——ただし、そこに霊はいない。
いるのは、英語を完璧に聞き取り、客の嘘をひとつも見逃さない娘だけだ。
相次ぐ上品な心臓発作。内側から閂の掛かった書斎。死因そのものを設計する、顔のない男。
偽りの霊言で、生者の嘘を暴く。名探偵の時代が来る、ほんの少し前の霧の都で、嘘つきたちの降霊会が幕を開ける。
「あなたにだけは、嘘をつきません」
その言葉こそが彼女のいちばん大きな嘘だったと、通訳の僕が知るのは、まだ先の話。